マジックの話, ビジネス

マジシャンのためのお金の稼ぎ方

マジシャンとして生計を立てるにはどうすればよいのか。

マジシャンを志す多くの人が、この問題にぶつかります。残念ながら、マジックを一生懸命練習しても「稼げること」には繋がりません。

そう、マジックのタネや仕掛け、演技理論は本やDVDから学べても「マジックでお金を稼ぐ方法」について学べる機会は多くありません。そもそも再現性のある形でノウハウ化するのが難しいからでしょう。なので、あえて書いてみます。

この記事では「いかにしてマジックでお金を稼ぐのか」について、私の知りうる限りのことを書きます。もちろん、私も試行錯誤の渦中ですが、少しでも参考になれば幸いです。

※クリエイターの方々にも、もしかしたら参考になる部分があるかも。

はじめに

最初に私の懐事情についてお話すると、今の所、年間を通してマジックで受け取る報酬は同世代の一般的なサラリーマンよりはおそらく多いと思います。形態としてはフリーランスのマジシャンです。

どこにも所属せず、イベントやパーティでのいわゆる「営業」が中心です。なので、これから書くことも営業の獲得を念頭に置いています。

偉そうに語れるほどではありませんが、今の所、文明的な生活を維持できています。

どうしてこんな記事を書くのかというと「素晴らしい技術を持っているのに、それをお金に変えられないというのは、社会にとっても不幸なことだと思うから」というのが一つ。

もう一つは「仲間が必要になるから」です。

私は敬愛するマジシャンたちと「マジックをより良いもの」として広めるためにマジックの可能性を探っています。私たちは時がきたら、旗をあげます。その時に共にアクションしてくれるマジシャンを探しています。

そのためにはまずは役立つリソースを公開し、認知して頂きたいと考えました。

そういうことなので、一生懸命書きます。

 

1 収入を増やす公式

まず、基本的なところから書きます。
ビジネスを拡大する時にとれる手法は、3つしかありません。

1.お客様を増やす(呼んでくれる人を増やす)
2.平均単価を上げる(一回の「ギャラ」をあげる)
3.購入頻度を上げる(実施回数を増やす)

絶対公式はこれです。

「お客様の数×平均単価×実施頻度=総収入」

それぞれの割合を10%増やすと、全体の収入は33%増え、25%増やすと倍になります。

今回は最初につまづくであろう「お客様を増やす」にポイントを絞り、具体的にどのような手法をとればいいかを順に解説します。

 

2 マーケティング戦略 -準備編-

具体的な戦略に移る前に、まずは「受け皿」を整えるところから話をスタートします。

 

①「看板」をつくる

お客様を増やすには最低限の看板、つまり「仕事を受け入れる体制」を整える必要があります。

プロとしては当然のことなのですが、どういうわけか最低限のラインすら整っていない方が多いように思えます。ここを疎かにすると前に進みません。具体的には以下の通り。

・名刺
自宅のプリンターで印刷したような安っぽいものを使わない。デザインはプロに頼む。

・ホームページ
独自ドメインで作る。無料のサイトで作らない。

・宣材写真
iPhoneの自撮り写真は使わない。プロに頼む。

・プロフィール資料
自分の写真付きのプロフィール資料をA4一枚で作る。実績や経歴などを掲載し、自分の魅力が客観的に伝わるコピーライティングを施す。

・衣装
高価なものである必要はないが、キャラクターを加味しても、安っぽくみえるものは選ばない。

クライアントはマジックだけではなく、あらゆる面であなたを品定めします。

誤解を恐れずに言うと、ほとんどのクライアントはマジックに対する知識がないので、それ以外の部分であなたがどのようなマジシャンかを判断します。そのため、これらの「看板」が非常に重要なのです。特別な戦略がない限りは看板がないと話になりません。

また、多くのクライアントはマジシャンを呼ぶのに、少なからず不安があります。信頼性を高めるためにも、看板を疎かにしてはいけません。

ここはプロを頼りましょう。プロが周りにいないなら、遠慮なく私に相談してください。

 

②自分のリソースの認識(強み/独自性)とターゲットの設定

最適な看板をつくり、マーケティングを実施するには、自分の強みや独自性を認識する必要があります。

ピンとこないと思うので、まずは「どのような場所で誰にマジックをしたいのか」を願望ベースで決めてしまいます。

  • レストランや飲食店
  • ウェディング
  • 企業のパーティ(どんな?)
  • 介護施設
  • 教育施設
  • VIPやハイソサイエティ

…などでしょうか。

その他、テレビやメディア、独自開催のショウなどもありますが、今回は割愛します。

「どこでもいいからマジックをしたい!」ではなく、しっかりターゲットを選定することが大切です。それによって当然、キャラクターやマジックの演目も変わってくるからです。「なんでもできる」では決め手に欠けます。

その上で、次の質問に答えられるようにします。

クライアントがあなたを選ぶ理由=あなたの強みは?
(ビジュアル、技術、経歴、価格、対応言語、円滑性、信頼etc)

さて、以上を前提に、具体的な戦略についてお伝えします。

 

3 マーケティング戦略 -実践編-

表はこれから解説する各モデルの労力コストと獲得可能性の関係性です。合わせてご覧ください。

 

①紹介モデル

どのようなビジネスも「紹介」が一番話が早く、また重要です。

まずは知人の中にクライアントになりうる人を探し、自分の存在のタネを蒔いておきます。また、いきつけのお店を作っておくなど、いくつかのコミュニティに属し、キーマンと親密になっておくことも有効です。

「今度、こういうイベントがあるんだけど、なんかアイデアないかな…」という話が出たときに、あなたの名前が上がることが重要です。私も意図したつもりはなかったのですが、年によっては仕事の半分がこうした紹介からです。

著名なマジシャンへの弟子入りやアシスタントを申し出て、隙あれば仕事を回してもらうのも「紹介」のひとつの形です。

 

②エージェントモデル

パフォーマーの派遣事務所やタレント事務所にアピールする方法です。

こうした代理店の方々は日々、様々なイベント案件を抱えています。そして「ネタ」も探しています。その中であなたが提案してもらえるポジションにつくということです。どのようにアピールするかというと、ググって連絡して、アポをとるだけです。(こういうときにも「看板」が必要になります。)

もしくは自分でエージェントを雇い、例えば成果報酬で契約する方法もあります。ちなみに私も時折、エージェントとして、他のマジシャンをキャスティングすることもあります。

 

③インバウンドモデル

ホームページや広告からの流入です。

これにはSEOやコンテンツマーケティング等のウェブのスキルが必要です。(後ろに参考書籍を載せておきます。)ここは今後、かなり重要になってくるところだと思います。私もあるキーワードで上位をとっているので、イベントの季節になるとお問い合わせをちらほら頂きます。上手くやれば、メインの流入源となりえます。勉強中です。

 

④ダイレクトモデル

クライアントに直接、営業を仕掛けるモデルです。

具体的には、メールやDM、電話をかけまくるということです。これには営業スキルとメンタルが必要です。(こちらも後ろに参考書籍を載せておきます。)

正直、かなり難しいのですが、ハマれば成果がでるときもあります。私の場合、成約率約10%が最高記録です。100人(社)くらいにアプローチし、10件のご依頼を頂いたということです。(今は、ほとんどしていません。)

 

4 価格設定について

相場についてはこちらに書いておきました。参考にしてください。

リンク:マジシャンに依頼する際の料金(ギャラ)の相場について

ちなみに長い目でみると、価格を下げることで良いことはほとんどありません。公式を思い出してみてください。

また、忘れてはいけないのはマジシャンとして動けるのは一人であり、稼働できる時間に限りがあるということです。つまり、スケールアップできないビジネスモデルです。

ここで単価を下げると頭打ちのラインが低くなり、価格競争になるだけなので、あくまでキャンペーン的な値下げにとどめることをおすすめします。

ターゲットによってはフリー戦略(最初にタダでやる、報酬を違う枠で設定する)、成果報酬戦略(レストラン等で見てくれた人数に応じて等)があります。上手く設計することでwin-winな形をつくることもできるでしょう。

 

5 マネタイズポイントを疑う

主にフリーのマジシャンとしての戦略を解説してきましたが、もちろん、それだけがマジシャンのマネタイズポイントではありません。

安定性と報酬の高さの関係性を表にしました。

見て分かる通り、キャッシュフローを安定させるのは至難の技です。報酬と安定性を高く維持できる理想の形(ゴールデンスクエア)を作るには、定期出演の報酬を上げること、またはファンをつけて独自集客でのイベント/ショウの利益(客単価/頻度)を上げることが考えられます。いずれも難易度は高いでしょう。

思わぬところにチャンスが隠れているので、常にアンテナを張っておくのが大切です。私も教育の場で通年契約でマジックを指導したりしています。

参考:学校教育に「マジックの授業」を

 

6 改善を繰り返す

これらをざっと一通り実施してみて、上手くいくこともあれば、上手くいかないこともあります。それらの原因を洗い出して、改善を測ります。いわゆるPDCAを回すってやつです。

 

7 複数の収入源を持つ

元も子もないのですが、マジシャンの営業活動は成果が発生するまで時間がかかることが多く、これだけやってもマジシャンという職業で稼ぐのは(他の職業と比べると)難易度が高いのは事実です。

今は良くても「生涯に渡り安定させる」のもやはり構造上、難しいところがあります。そのため、リスクヘッジと体力の温存のため、複数の収入源を持っておくことは大切です。

私も、先日ローンチしたトランプの製作事業をはじめ、キャスティングやイベント制作、ホテルのプロデュースと運用、ウェブメディアの運営、ライター、インバウンド支援など複数の事業を経営しています。

今の時代、「腕一本で喰っていく!」というより「あっちがだめならこっち!」と動ける方が賢いです。案外、経験が掛け算になり、その方が上手くいったりもします(体験談)。なにより「好きなこと」を続けることができます。

 

いかがでしたか?何かお役に立てそうなことがあれば幸いに思います。

もし参考になりそうなことがあったのであれば、他の方にもシェアして教えてあげてください。私でよければ、質問や相談も受け付けます。

最後に、参考になる本をご紹介しておきます。
それでは、良きマジックライフを。

 

参考になる書籍セレクト

プロを志すなら読むべき本です。
目からウロコの考え方、知識に触れることができます。

ダイレクトマーケティングの良書

 

 

ウェブマーケティングの良書

 

その他、参考になる良書