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物語の王道法則「ヒーローズ・ジャーニー」 から学ぶ小説や脚本の書き方
小説や脚本の書き方として参考にされることも多い、王道の物語の型「ヒーローズ・ジャーニー」をご存知でしょうか。
ジョージ・ルーカスが映画「スターウォーズ」に適用したことで広く知られていますが、世界中のプロのライター、映画やテレビのプロデューサーや脚本家、小説家等もこのメソッドを取り入れ、スターウォーズをはじめ、マトリックス、ロードオブザリングなどの世界中のヒット映画やドラマ、コミックなどに広く適用されています。
僕自身も、マジックのショーの構成、講演のシナリオライティングなどで参考にしています。
物語(ストーリーテリング)の技術は、一部の専門家達のみに役立つ技術ではありません。
プレゼンテーションや講義、説得、交渉、愛を語る時。日常の様々なシーンにおいて、応用できるスキルです。
僕はコピーの勉強中に「神話の法則」という本に出会い、この「ヒーローズ・ジャーニー」を知りました。
今日は、誰でも魅きつける物語を作ることができる「ヒーローズ・ジャーニー」を、名著「神話の法則」を元にご紹介します。
概要:ヒーローズ・ジャーニーとは
アメリカの神話学者である「ジョセフ・キャンベル」は古代から受け継がれる神話の数々の研究した結果、共通する「物語の流れ」があることを発見しました。膨大な神話研究に加え、ユングの深層心理学をもとに生まれたのが「ヒーローズ・ジャーニー」です。
そして、ジョージルーカスがこの普遍の法則を大ヒット映画「スター・ウォーズ」に適用したとして広く知られるようになりました。このメソッドは、文化、言語、時代を問わず、基本的には世界共通のパターンだと言われています。
名著「神話の法則」では、あらゆる優れた物語にこの「ヒーローズ・ジャーニー」が適用できるとして、それをさらに発展させ現代的なストーリーテリングに適用するメソッドが紹介されています。「ヒーローズ・ジャーニー」は、今ではストーリーの「王道」の型となっています。
ここではその一節を要約し、「ヒーローズ・ジャーニー」の原型をご紹介します。
無限にもあると思われる数々の神話の多くは「旅(ジャーニー)物語」です。
主人公は住み慣れた環境を飛び出し、葛藤や刺激、挑戦が待ち受けています。そして、その中で主人公はある種の変化の過程を味わいます。
絶望から希望、弱者から強者、憎しみから愛、全ての優れたストーリーには主人公に変化の過程が存在します。このような精神的な変化の過程が、観客の意識に強烈な共感を生み出すことになるのです。
それでは、ヒーローズジャニーの具体的なステージ展開について、見ていきましょう。
※僕は漫画「ワンピース」が好きなので、独断で具体例としてちょくちょく引用します。
ヒーローズ・ジャーニー 12のステージ
基本的に映画や物語には3つの大きな「幕」があります。
1、主人公の決断
2、主人公の行動
3、主人公の行動の結果
この3つの幕の中に、細分化された12のステージがあるというのが、「ヒーローズ・ジャーニー」の全体像です。
それでは順に見ていきましょう。
1、オーディナリーワールド(日常の世界)
主人公が日常的な世界から、特別な世界へと旅立ちます。そして、その特別な世界へ抜け出す様子を観客に魅せるためには、まず普遍的で日常的な世界を観客に見せる必要があります。このステージでは、日常の世界を描きます。
ターゲット(観客)が明確になっている場合は、その観客の日常に可能な限り似通った情景をイメージさせることで、共感を得ることができます。
「ワンピース」でも、第一話でルフィは特別な力のない普遍的な少年として描かれていますね。
2、コール・トゥ・アドベンチャー(冒険への誘い)
これから待ち受ける「冒険」を、主人公が提示されるステージです。ここでストーリーの課題や問題を提起します。つまり、恋人を見つけるのか、海賊王になるのか、復習を決意するのか、困難に立ち向かうかなど、「冒険」で何を得るのか、ここでゴールを明確にします。もちろん、これはアクション映画だけでなく、コメディや恋愛ドラマにおいても同じです。
3、リフューザル・オブ・ザ・コール(冒険への拒絶)
主人公が提示された冒険に対して、恐怖を抱くことを表現します。主人公は恐怖抱いたり、尻込みしたり、気乗りがしなかったり、断るような態度をとります。ここでは完全に冒険に足を踏み入れることができない主人公の様子が描かれます。
映画「スターウォーズ」では、ルークはオビワンの誘いをここで断っています。「ワンピース」ではルフィは、山賊に襲われ、己の非力さを思い知るシーンが当たるかもしれません。
4、メンター(賢者)
冒険に躊躇したり、拒絶した主人公を後押しするのが「メンター」の存在です。教師と生徒、弟子と師匠のような、主人公を冒険へ導く存在が紹介されます。メンターの役割は主人公を見知らぬ世界に直面するための準備をさせることです。
映画「スターウォーズ」では、オビ・ワンがルークにライトセーバーを渡し、「ワンピース」ではシャンクスがルフィに麦わら帽を渡します。
メンターは少しの間しか、ヒーローと行動を共にしません。時々、冒険を進めるために突き放すシーンなども描かれます。
5、クロッシング・ザ・ファースト・シュレスホールド (第一関門突破)
主人公は、ついに冒険の旅に足を踏み出し、特別な世界に入ります。
ここで主人公は「2」のコール・トゥ・アドベンチャー(冒険への誘い)に前向きになります。この瞬間からストーリーが本格的に展開していきます。ここまでが大きな流れの一幕目です。
「ワンピース」ではゴムゴムの実を食べたルフィが数年修行した後、1人で海へ出るシーンです。
6、テスト、アライズ、エネミーズ(試練、仲間、敵対者)
冒険の旅に出る覚悟ができた主人公は、新しい挑戦や試練に出会い、協力者や仲間、そして敵対者と出会います。
それぞれのシーンには様々な課題があり、ここで主人公が行動する様子から、主人公のキャラクターや、敵、物語の前提知識、などが明らかになります。観客は随所で主人公の成長を感じ取ります。
7、アプローチ・トゥ・ジ・インモウスト・ケイブ(もっとも危険な場所への接近)
主人公は特別な世界において、最も危険な場所の入り口に立ちます。
主人公は、危険な場所に立ち入るために準備をしたり、修行をしたり、計画を練ったりします。ここは第二の関門です。
「ワンピース」では「グランドライン」を越えるために様々な試練を乗り越え、「新世界」を前に、二年間の修行をするシーンがあります。
8、オーディール(最大の試練)
主人公が最大の試練や恐怖と立ち向かわなければならないシーンです。
仲間やメンターの死に直面したり、敵との戦いに巻き込まれたりします。ここは物語において最悪の瞬間で、観客は緊迫するシーンです。
「ワンピース」ではグランドライン編やアラバスタ王国編など一区切りのある物語のほぼ全てで、このようなシーンが描かれています。ルフィが敵にボコボコにされて、死にそうになる、全く敵わないバーソロミュー・クマによって仲間を飛ばされる、エースの死。映画「E・T」では、手術台の上でE・Tが死んでしまったかのようなシーンがあります。
このステージは物語において、最も重要なシーンです。観客は死や試練に直面した主人公に感情移入し、憂鬱な気分になりますが、主人公が試練を乗り越えたり、生まれ変わることで、観客のボルテージをグッと引き上げます。
9、 リウォード(報酬)
ここで主人公たちは冒険の目標を達成し、観客とともに祝杯をあげます。
ここで手に入れたものは、目的の宝物かもしれませんし、特別な武器かもしれません。または、恋人の行方の手がかりかもしれません。主人公は最大の試練を乗り切った結果、より魅力的になるのです。
ワンピースにおいても節目節目で、このようなシーンが描かれます。まさに「祝杯」をしているシーンもありますし、新しい能力やワンピースの手がかりを手にいれています。
10、ザ・ロード・トゥ・バック(帰路)
主人公たちはでは、まだ完全に危険な状態から抜け出していません。敵対者との和解が成立していないのであれば、このステージでは追跡(チェイス)されることがあります。
スターウォーズでは、ルークとレイア姫がデススターから脱出する際に、ダース・ベイダーに追いかけ回されます。ワンピースでは、節目が終わるごとに新たな敵勢力の存在が描かれます。
このステージでは、主人公が日常の世界へと戻る事を決意しますが、この時点ではまだ、冒険の世界、スペシャルワールド(特別な世界)の持つ危険や試練が存在しています。
11、 リシュアラクション(復活)
このステージは「8」のオーディール(最大の試練)の次の「生死の瞬間、試練」です。「めでたしめでたしと思ったら、まだ終わってなかった!」「やっつけたと思ったのに、また復活して、絶対絶命!」みたいな展開、ドラゴンボールでもよくありましたね。
一難去って、また一難。最後の難関を乗り越えるシーンを通し、主人公には内面的な変化が起こります。
スターウォーズではこのシーンは幾度も登場します。ルークは生死不明の状態から奇跡的に生還する。そして、その結果新たな知識やフォースを得ます。
第三の試練を突破し、様々な経験を得て、主人公が新たに生まれ変わるステージです。ここまでが大きな流れでの第二幕です。
12、リターン・ウィズ・ジ・エリクサー(宝を持っての帰還)
様々な試練を乗り越え、新たな人格として生まれ変わった主人公は、その冒険の報酬とともに、スペシャルワールド(特別な世界)から、オーディナリーワールド(日常の世界)へ帰還します。めでたしめでたし。
ここでは、冒険のエリクサー(宝)を持って帰還することが大切であって、そうでなければ、冒険が無意味なものになってします。この宝は、愛や平和、自由や知恵、またはその世界でいく抜くための知識かもしれません。スターウォーズでは、ダースベーダーを倒し、銀河に平和をもたらしました。
コメディ映画では「主人公が何の教訓も得ずに、また同じトラブルを繰り返す(また旅に出る)」というようなエンディングも用いられます。
「ヒーローズ・ジャーニー」の大枠は以上です。あなたが好きな映画やドラマに当てはめてみてください。適用される部分が多くあるはずです。
しかし、ここでストーリーテラーが注意しなければならないのは、「ヒーローズ・ジャーニー」は基本の型であって、公式ではないということです。大きく枠を外し、物語を展開することも可能ですし、省略することも可能です。意識的になんでもかんでもストーリーにもはめ込むと、量産的な作品になる危険性を秘めています。
また、「ヒーローズ・ジャーニー」の全体像を見て、何か感じ取ったことはありませんか?
そう、「ヒーローズ・ジャーニー」は、我々の人生の流れとも酷似しています。多くの人の人生は、旅立ちがあり、師や友との出会いがあり、幾度もの困難があります。「ヒーローズ・ジャーニー」は人生を象徴しているのですね。だからこそ、多くの人の共感を生むのです。
「ヒーローズ・ジャーニー」は柔軟性のあるツールで、物語のアイデアを生み出す手助けをしてくれます。
ご興味のある方は以下の本でより深く学ぶことができます。
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何かのご参考までに。