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少し心が温まる”たった3分のマジックが生んだ物語”

Fabulous_Winter_Night

僕がマジシャンだと言うと、たまに聞かれる質問があります。

「今までで一番心に残っているエピソードはなんですか?」

そんな時、いつもお話させて頂く話を紹介しようと思います。

僕のマジックのスタイルでよくあるのが「テーブルホッピング」というスタイル。レストランやホテルで各テーブルを回り、お客様の目の前でマジックを披露するという形。

これは去年の秋頃、あるホテルでのテーブルホッピングの時のお話です。

いくつかテーブルを回らせて頂いた中で、食事をされていたご夫婦とお子様1人のテーブルがありました。お子様の誕生日を祝っていたようでした。

僕は即興でしたが、誕生日にちなんだマジックを演じ、誕生日のお子様にトランプをプレゼントしました。とても喜んでくれたのを覚えています。マジックをした時間は、わずか三分程度でした。

そんな素敵な出会いから、約半年後、寒い冬のある日、僕のメールフォームに一通のメールが届いていたんです。漢字がところどころ間違えていて読みにくいメール。

半年前、カードをプレゼントしたお子様からでした。

僕はトランプと一緒に記念になればと名刺も渡していました。

びっくりして読んでみると、そこにはこんなことが書かれていました。

「こんどぼくのおかあさんとおとうさんの結婚記念日なんです。ぼくのおこずかいは毎月500円なので、今は3000円くらいしかありません。おかあさんとおとうさんにもトランプをプレゼントしてもらいたいんです。トランプをしてくれませんか。おねがいします」

なんとも、言葉にできない気持ちになりました。

両親を感動させたい、その一心で僕にメールを送ったのでしょう。小学一年生の彼にとって、僕にメールを送ること、そして3000円という価格、とっても勇気がいることです。

僕はその子に1つ、マジックを教えてあげることにしました。

僕がマジックをするより、彼が心を込めてマジックをした方がきっといいものになると思ったから。

もちろん、最後にトランプをプレゼントする演出も忘れずに。

僕は彼がマジックが成功したのかどうか、分りませんが、きっと成功したのでしょう。

後日、彼の母親から感謝のメールが届きました。

そこには最後にこう書いてありました。

 

「彼は今、マジックに夢中です」と。

 

誰かの思い出の1ページに残れることは本当に素敵なこと。

僕がエンターテイメントの世界が好きなのは、つまり、そういうことなのかもしれません。