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人前に立つ仕事、自己評価は厳しく|”お客様の声”に甘えない
毎回、パフォーマンスが終わるたびに一人反省会をします。
その際、自分への採点は割と厳しめにつけるようにしています。
今日はそんな話を。
自己採点を厳しめに設定する、というのはつまり「お客様の評価を100%鵜呑みにしない」ということでもあります。
どういうことかというと、大抵の場合、マジック、もしくは他の演劇やパフォーミングアート、公演やセミナーなどを観たお客様は演者の前では「素晴らしかった!」という評価をしてくださるからです。
表面上はそうすることがマナーというよりは、社交の場ではそうすることがスムーズだから、です。
余程のお人好しか、身内の人くらいしか、ダメなところはわざわざ伝えてくれません。
僕たちも、レストランで出てきた料理が美味しくなくても、わざわざシェフを呼びだして、不味かったよ!とは言いません。
お客様の本心は、ステージから降りたマジシャンには読めないのです。
ある時、僕はそんなことに思いを巡らせて、疑心暗鬼になったことがあります。マジシャンが疑心暗鬼って笑っちゃいますけど。
そんなことを、ある信頼できるマジシャンに話すと、
「自分の芸を卑下しすぎでは。嘘だたったら『一緒に写真撮ってください』まで言わないですよ。お褒めのお言葉はなによりの励みになる言葉ですから、素直に受け取ることも大切だと思います。結局、わからないのですから。それ以上は、芸とお客様に真摯になることしか、僕たちにできることはありません。」
そんなアドバイスをくれました。
僕は彼のその言葉に、少し救われました。
お褒めの言葉はしっかり噛みしめた上で、家に帰ってからの自己採点では「お客様からのポジティブな声」は加点対象にしないことが大切だと思っています。
特にマジックの場合は”過剰に良く”評価される傾向にあります。
現場では「(マジックに)目が肥えているお客様」にほとんど出会わないですから。
テレビでは見たことがあるけど、生で見るは初めて。そんな方が大半です。
悪い言い方をすると、適当なマジックを行なっても”その場では”なんとなかなってしまうのです。そして、演者はなんとなく気持ちよくなれます。
しかし、日々、積み上げてきたモノがない者の姿勢は必ず、お客様に伝わると思っています。どこかに綻びが見えるからです。逆に、積み上げてきたモノがある者の姿勢も伝わると思っています。
より一層に厳しく、自己採点しなければ、技術は錆びていきます。
釈然としない心情が続く場合は、演技や演者、つまり自分自身に問題があると思うようにしています。要は、努力・鍛錬不足です。
一方で「それは考えすぎだよ」なんて言って頂いたこともありますが、考えすぎないより、考えすぎている方が僕は好きです。
お客様の声に甘えずに、可能な限り客観性を持って自己採点を行う。そして、結局、真摯に打ち込むことでしか、道は開けない。
そんな風に思うのでした。