BLOG, 思うこと
奇術の秘密は言わぬが花|種明かし番組について
先日、「種明かし」番組の出演依頼を頂いたのですが、僕の許容範囲を越えていたのでお断りさせて頂きました。
マジシャンは種を明かしてはいけない。
法で縛れるものではないが、マジック界の暗黙の掟だ。
マジシャンという存在はマジシャンのモラルで成り立っている。
そのモラルの線引きは結構、難しい。実際のところ、どこまで種明かしは許されるのだろう。
本屋には立ち読みができるようにマジックの本が売ってあるし、マジック教室みたいなものも探せばいくらでもある。
だからこそ、僕はマジシャンになれたわけだし、僕自身もそのようなレッスンや、ワークショップの仕事をすることもある。
興味関心がある人にマジックへの扉を少しだけ開いておく。それくらいがボーダーラインではないだろうか。
テレビで種明かしをするとなると、大してマジックに興味もない不特定多数の人たちに、秘密を明かすことになる。
見てる人は有り難みなど感じないし、逆にがっかりする人もいるだろう。生でマジックを見たときの楽しみを奪ってしまうことにもなる。種を明かしたところで、何もいいことがない。
プロの方がまず実演しないようなマジックや、種の核心には迫らない心理的な要素ならまだいいかもしれないが、相当慎重になる必要がある。
今回、僕が依頼された「種明かし」は一線で活躍している人も使っている技術。
先人の知恵の結晶である秘密を、自らの売名行為と引き換えに明かすことは、マジックへの冒涜以外の何ものでもない。
マジックの楽しみ方は人それぞれだけど、僕個人は「観客」と「マジシャン」の双方がスマートに秘密を楽しむ娯楽ってくらいが趣があって好き。
奇術の秘密は”言わぬが花”。
見てる人にそんな風に感じさせるマジシャンが僕の理想です。