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あなたを説得するメディア|なぜタレントや芸能人が選挙で当選するのか。
少し話題が遅れた感はありますが、東京都知事の辞任が世間を騒がせています。
思えば、前大阪市長の橋下氏、前東京都知事の石原氏をはじめ、政治家で話題になる人物はメディア露出の多いタレントの方が多いように思えます。
今回話題になっている舛添氏もテレビの討論番組等に積極的に出演していた印象があります。
次の都知事選挙においても、各党は知名度のある人物を候補者に挙げています。
「都知事選挙は人気投票ではないか!」という批判も上がっているようです。
良い、悪いかは置いておきまして、なぜメディア露出の多い人物が選挙で当選するのか、少しだけアカデミックに考えてみます。
結論から言うと、動機が積極的でない場合、人は立派だと思われる人を支持するからです。
選挙の問題を、広告に置き換えてみると分かりやすいかもしれません。
テレビに流れる様々なCM、ほとんどの場合、著名なタレントが出演しています。そしてそこには莫大の費用が発生しています。
しかし、考えてみると、その商品の有用性を伝えることとタレントを起用することに相関性は無いように思えます。
そのカミソリの刃の切れ味が鋭く、安全性を有していることをアピールするために、どうして著名なプロスポーツ選手を起用する必要があるのでしょう。
答えは簡単です。
人は立派な人とそうでない人が同じことを説得した場合、前者を圧倒的に支持するからです。
立派な人とは、この場合、知名度があり、ある程度の好感度がある人物を指します。
スーツを着た清潔感のある人物とボロボロの服を着た小汚い人物が、「お金を貸してください。必ず返します。」と言ってきた場合、どちらを信用するか。
答えは明白です。なぜ、選挙でタレントが当選するかという問題も、根本的にはそういうことなのです。
プロスポーツ選手がカミソリについて専門的な知識を持っているかどうかよりも、その人物がいかに魅力的であるかが重要なのです。
これは、あらゆる実験結果が示す真実です。
そのため、広告主はその人物の好感度を最重要視するのです。
少し話題になりましたが、不倫をしたタレントをCMに起用しないのはその理由が大きいと思われます。
広告に登場する人物のイメージは、その商品のイメージに直結するからです。
政治の世界においても同じことが言えます。
何を言うかよりも、「誰」がそれを言うかのほうが重要なのです。
私たちは自分の行動を正確には予測できませんし、100%合理的な選択を行うことはできません。
私には関係ないと思っているあなたも、知らず知らずのうちに「説得」に影響されているはずです。
あなたの身の回りのものを思い浮かべてみてください。なぜそれを手にしたか、その商品の専門性に基づき、説明ができるものがいくつありますか。
洋服や歯磨き粉、化粧品、自販機の飲料水、家電、多くの種類がある中で、なぜそれを手にしたのでしょう。
「そんなものをいちいち考えていたら、キリがない!」というのは正しいのです。
それを判断のヒューリスティックといいます。
その商品がいかに機能的で優れているかなど、ほとんどの人が知りませんし、知る術もありません。
ですから人はその商品に意図的に吹き込まれたイメージや価格設定を元に情報を識別し、選択の判断を下します。
あの人が言っているのだから、価格が高いから良いものだ!というように。
しかし、この話には重要な補足があります。
それは「そのモノについて積極的に思考する動機がある場合は、判断のヒューリスティクは働かない」ということです。
選挙の話に戻しましょう。つまり、選挙や政治を積極的に考えていて、その結果によって利害関係がある、もしくはそう感じる場合は、その人物が有名人であろうがなんだろうが、判断に影響を与えないのです。きちんと事実に基づく考察を行い、一票を投じます。
では、果たしてどれだけの人が上記に該当するでしょうか。
どうしてその人に一票を投じるのか。多くの人はその人物のイメージで決めています。
何を言っているのか、何をするのかを知らない人も大勢いるように思えます。例えば、前大阪知事の橋下氏に一票を投じた人の街頭インタビューなんかをみると「何かを変えてくれそうだから」だとかの意見が多数です。多くの人が大阪都構想の具体的な内容、メリット、デメリットを説明できたかは疑わしいです。
なんだかよく分からないけど、「あの人はやってくれそうだ!なんだか見たことがある!」といったニュアンスで票を投じます。そしてこのような人たちが多くを占めているのが現実かと思います。だからタレント政治家が当選するのです。
それだけ「知名度を伴う好感度」というのは政治家にとって重要な要素の一つです。ですから、スキャンダルは致命的なのです。私たちは好感度の高い人物の言うことを信じて投票し、好感度が下がったら叩き始めます。言ってしまえば当然のことです。
ただ、好感度の低い/高いはメディアによるコントロールが大きいというものも頭に置いておかなければいけません。物事は捉え方と発信の仕方一つで大きく与える影響を変化させることができるからです。
小泉政権時、主な支持基盤として想定された「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」をB層と名付け、それに対する広告イメージ戦略が考えられていたことはあまり知られていません。
平たい言葉でまとめると、タレントが選挙で当選しやすいのは、好感度を伴う知名度があり、多くの人が政治に興味や知識を有しておらず、その人物のイメージで投票するからです。
私たちは普段生活している中で、メディアや広告に知らず知らずのうちに影響を受けています。
大切なのは無意識に目にしている情報には、作り手が必ずいるということ、そして作り手には意図があるということです。
どうしてそのタレントを起用したのか、どうしてその言葉を使うのか、もっと言うとなぜその情報があなたの元に来ているのか。
何かを選択する際は少しだけ、そのようなことを考えてみると、健全な選択を行えるかもしれません。
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