思うこと, ビジネス
マジシャンって儲かるんですか?
「マジックの授業」の中で、質問タイムを設けると必ず、
「マジシャンって儲かるんですか?」
という旨の質問があがります。
(参考:学校教育に「マジックの授業」を)
純粋に気になるところなのだと思います。
別にはぐらかさすことでもないかと思うので、それなりに応えるようにしています。
ということでブログにもさらっと残しておこうと思います。
マジシャンの雇用形態
マジシャンは基本的には、個人事業主=自営業者です。
(私の場合はいくつかの法人を経営しているので、
純粋な自営業ではありませんが。)
フリーのマジシャンの場合、
お給料があるわけではないので、
仕事の数×単価
が収入になります。
芸能事務所やエージェントを介することもありますが、
基本的には、上記のモデルでしょう。
一方で、マジックバーなどに所属するパターンもあります。
この場合は、時給だったり、お給料制です。
マジシャンの時給というとなかなかイメージしにくいところもあると思いますが、一般的なアルバイトの時給と同程度か、やや高めというのが私の印象です。
どれくらい儲かるの?
実際に数字にしてみましょう。
マジシャンのギャラの相場については以前にも記事に書きましたが(参考:マジシャンに依頼する際の料金(ギャラ)の相場について)日常的にメディアへの露出をしていない一般的な若手のクロースアップマジシャンの場合5万円〜10万円程度でしょう。あくまで個人的に思う平均値ですが。
例えば、一回のお仕事の単価が10万円だとして、月に5回仕事があると仮定しましょう。
この場合は、月50万円です。10回ならば、100万円です。20回ならば、200万円です。単価が5万円の場合はその半分といった計算です。
私の場合は仕事内容が特殊であったり、拘束時間がやや長いお仕事が多いので、実際にはもう少し上に幅があります。
完全なる成果主義
”仕事の数×単価”
そういうことなので、正直、ピンキリです。
完全なる成果主義の世界、弱肉強食です。
「全く仕事がない」ということもありえますし、
「忙しくて手が回らないよ!」ということもあります。
単価にもかなりの幅があります。
一回の単価が数十万、数百万となることもあります。
この辺りは、マジシャンの実力や実績、営業力次第です。
実力だけでなく、運の要素も大きいです。
特別に儲かる仕事ではない
どう思われたかは分かりませんが、
「お金を儲けるんだ!資本主義の権化になる!」
というのであれば、マジシャンは賢い選択肢ではありません。
世の中、お金を稼ぐ手段はたくさんあります。
時代に流れに沿ったジャンルで起業したほうが、成功確率は高いです。
エンターテイメントは素晴らしい産業ですが、衣食住に関わるものではないので、どうしても優先度としては低くなりがちです。
景気の影響も大きく受けるでしょう。
レギュラーを抱えていないフリーの場合は、月ごとの利益も不安定です。12月などの繁忙期はフィーバーしたり、閑散期は…だったりします。
自らの表現と世の中の需要や流れがマッチすれば、大きく飛躍する可能性は秘めていますが、確率から考えるとギャンブルである側面は否定できません。
表現と金
芸術家の歴史を振り返ると、過去の芸術家には投資家=パトロンの存在がありました。
絵画の場合は投資としての価値があったという事情もありますが、純粋に芸術でお金を生むということが困難だったのかもしれません。
賛否はありますが、マジックを「自らの表現」として発信するという意味では、芸術としての側面があると私は思っています。
そして、「表現すること=アート」と「ビジネス」は、相性が悪いというのが私の思うところです。ビジネスとしてと考えるならニーズや流行を考えた上で発信する必要があるからです。
そういう意味では、私のスタイルはクライアントのニーズを掴んだ上で表現する「デザイン」に近いのかもしれません。
一寸先は闇
低次元な話をすると、マジシャンの場合、表現する職業の中では人口がやや少ない部類に入るので、駆け出しからの報酬単価も高めに設定できる傾向はあります。
若手のうちはそれだけで価値が高まる側面もあり、実力と工夫次第ではそれなりに豊かな生活をおくることもできるでしょう。メディア戦略によって一時的に露出を増やすことができる人もいます。
とはいえ、長い目でみると、それに甘んじていたら辛酸を舐めることになるでしょう。
別にマジシャンに限った話ではありませんが、どれだけヒットしても、一寸先は闇な職業です。
自身のブランドや実績、実力を積み重ねていないと、年老いてからも継続的に安定した収入を得るというのは結構、難易度が高いというのが正直な印象です。
体力的な問題もありますし、短いようで長い生涯、うまくいっているときもあれば、低迷することもあるでしょう。
労働集約型のビジネスモデルなので、自分が「労働=マジック」をしている時間しかお金が発生しません。正社員のように年功序列という概念は皆無です。
幸いながら、私は毎年1つずつステップを踏んでいる感はありますが、ずっと右肩上がりだというのは、少し楽観的なのかなと思います。
現代はテクノロジーの進化により、日本のような経済大国であれば、小さな個人として生きる難易度はぐっと下がりました。
それでもやはり、需要と供給のバランスや構造から考えても、成功するのは一握りの厳しい世界であるというのは事実だと思います。
生半可な覚悟では続けることはできません。
サバイブするために
そもそも好きでやっていることなので、お金に執着しないという考え方もできます。
今を生きるんだ!今が楽しければいんだ!という指針を立てるのも1つの戦略です。
そういう方にとっては、この話は不毛です。
私の場合は、すべてを捨てることができません。旅行もいきたいし、シーシャも吸いたいし、ガジェットも買いたいし、友達や愛するひと、俗世間を乖離させることが今のところできる気がしません。煩悩まみれです。
それならそれで戦略を立てないといけません。
私は今も、明日も10年後も、死ぬまでマジックをそれなりに、楽しくやっていきたい。そのためには現状の社会システムですと、ある程度のプール=お金は大切だというのが私の考えです。
それこそBI(ベイシックインカム)なんかが実現したら話は別ですが、少なくともここ数十年は期待薄です。
私の場合はマジックをライフスタイルとしながらも、事業は複数並行して営んでいます。マジシャンの肩書きを出さないときもあります。
身体が資本なので、健康には十分に気をつかっていますが、それでも明日、何かしらの怪我や病気を負うリスクは常にあります。
そうなっても最低限の生活は維持できる体制を構築しているということであります。収入のポケットはいくつかあったほうが安心だという考え方です。投資の世界でも、分散投資するのは当たり前です。
人によってはそんなものは邪道だ、誠実ではないと反感を買うこともあります。集中と選択が必要だという人もいます。
この辺りは人それぞれだと思います。
もちろん、何をしてもキャッシュフローが生まれないということは、市場に求められていないということでもあります。そうなった時には選択と集中は必要でしょう。
ただ、それが自らの表現なのであれば、続けることが恩返しになったり、意味が出てくる側面もあります。人生何があるかわかりません。
いかがでしたか。
まさかここまでのことは授業ではお話していませんが、単価程度のお話はしています。別に隠すことでもありませんしね。
どう思うかは、人それぞれでしょう。
いずれにしても、小さな時代の転換期、上手にサバイブしていきたいものです。