マジックの話, 思うこと

マジック中のトラブルを防ぐための覚書

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ある程度の期間、ライブでマジックを提供していると諸々なトラブルに見舞われます。

それについて、自戒も込めて、ここにまとめておきます。

※この記事にはある程度マジックに親しみのある方にしか分からないように記述している部分があります。ご了承ください。

トラブルといっても様々なものがあります。

それは大きく分けて3つに分類されると考えています。

 

①マジシャン自身の問題、ミス

②環境(マイクや照明のトラブル等々)

③お客様の行動

 

①と②に関しては、広い意味できちんと準備をすることで大抵の場合は解決します。何をどう、具体的に準備するかについては、シチュエーションによって異なり、こればかりは場数と経験を踏むことでしか得ることはできません。僕もまだまだ勉強中です。

 

少々厄介なのが③のお客様の行動によって引き起こされるトラブルです。

いくつか例を挙げてみましょう(実際に経験したもの)。ちなみに僕の仕事の80%はフォーマルなイベントやパーティでのテーブルホッピングやウォーキングアラウンドです。

 

  • 道具を勝手に取り上げれる(カードを戻してもらった後にシャッフルされる等々)
  • やたらとツッコミが入る(的外れな種明かし演説を始める等々)
  • お客様が最中にいなくなる、電話がなって出られる
  • ドリンクをこぼされる
  • 殴られる

 

大体はこんなところでしょうか。

僕自身、マジックを人前で披露して間もない頃はしばしばこのようなトラブルに見舞われていたのですが、今ではほとんどこのようなトラブルに遭うことはありません。滅多にありません。これは僕自身の態度や考え方、マジックの技量、ポジション、経歴、披露するシチュエーションが変化したことが起因していると思われます。

さて、この手のトラブルに関して、まず「お客様に挑戦しないこと」です。「分からないだろ?すごいだろ?」という態度は当然のこと腹が立ちます。「じゃあ種を見破ってやる!邪魔してやる!」となります。そうなった場合、マジシャンは観客に勝てません。たとえ最期までお客様を煙に巻いても、フラストレーションが残るだけです。

そして、「謙虚に紳士的に振る舞うこと」です。当たり前ですが、大変重要なことだと思っています。毎日拍手喝采を受けていると、どういう訳か勘違いしがちになります。マジシャンは観客がいるからこそ、拍手を頂けるのです。別に偉くありません。横柄な態度な人にはそれ相応な対応が返ってきます。目の前の人は、自身の鏡であるとはよく言ったものです。勘違いしてくると、きちんと挨拶をする、身だしなみを整える等々、人として当たり前のことが抜けてしまいます。

また、お客様にはそれぞれ自分の都合があります。イライラしていたりだとか、付き合いで嫌々パーティに参加しているだとか、化粧が上手くいかなかったとか、日々の生活に余裕がないとか、そんな時に目の前によく分からない若造がいきなりマジックを始め出したら、苛めたくなる人もいるのです。中には明らかにマナー違反の方もいます。それでも、お客様ありきのマジシャンです。だからこそ謙虚に感謝の心を持って、マジックをすることが最も大切だと思っています。

この辺りがしっかりとお客様に伝わると、上に挙げたようなトラブルはグンと減ると思われます。

加えて、テーブルホッピングなどはどちらかというとマジシャン側が無礼に見られることさえあります。マジシャンなんてお呼びじゃないって人もいます。マジックが嫌いだって人もいます。そのような著しい拒否反応があれば、残念ですが、マジックを披露しないという手段もあります。

 

さて、これを踏まえて、もう少し具体的に上記のトラブルへの対応策として僕が心がけていることを記しておきます。

・道具を勝手に取り上げれる(カードを戻してもらった後にシャッフルされる等々)

対策として最も簡単な方法は、何をされても大丈夫なようにしておくことです。具体的には観客の手によって改めが可能である道具しか使わないことです。加えて、最初に改めをしてもらうこと。マジシャンというだけで怪しいのに、そのマジシャンが勝手に用意した道具は怪しいに決まっています。何をしても怪しいのですが、少しだけフェアに近づけるために、トランプなら最初にシャッフルして頂く等は行うようにしています。

また、手の届く範囲に都合の悪いものは置かないこと。同じく、都合の悪い時(秘密の動作時)は、観客から少し距離をとることで「その気」を起こすのを防ぐことができます。

「カードを戻してもらった後にシャッフルされる」は、マジシャンからすると少々厄介です。 このような妨害は実際にはほとんどないのですが、Take One型のマジックを行う場合、僕はC・Fを保険として行っています。例えシャッフルされたとしても、アウトが用意できます。ただ、それだけでは対応できないシュチュエーションもあります。例えば、ア◯◯シャスカードの最中です。力技ですが、Pを使って、他のところから出現させたり等の対処ができます。なのでお財布は胸ポケットに入れておきます。他、違うマジックにすり替える、もしくは、開き直って何も起こさないことでウケを狙うという解決法もあるでしょう。いずれにせよ、起こりうるトラブルを事前に想定し、それに対する対応を考えておくことが大切です。

もう一つ、ポケットにあるもの(マジシャンなら誰でも知ってるアレ)を最終保険として入れておくようにしています。これは尊敬しているマジシャンに教えて頂いた方法ですので、ここでは伏せておきます。

これら考えられる方法を使っても解決が難しい場合は、「丁寧に断りを入れる」ということが効果的に働きます。つまり「他のお客様に迷惑なので、どうか大人しくしてください」という旨をオブラートに包み、心から言います。少々、お客様に良識と常識が欠けていたとしても、ここまで言ったら分かってくれます。ただ、これは最終手段です。

 

・やたらとツッコミが入る(的外れな種明かし演説を始める等々)

ツッコミに対しての返しを用意しておくことです。何度か実演すると、同じようなツッコミが多いことに気づきます。それに対する「返しリスト」を作っておきます。

もう一つ、テンポを上げることです。突っ込む隙を与えないということです。セリフをしっかり練習していると、そこそこの早口でもマジックをこなせるようになります。特にテーブルホッピングやウォーキングアラウンド は見方によっては、いきなり観客に割り込んでマジックを見て頂くというそもそもの難易度が高い行為なので、自分のペースに巻き込むために意図的に行うこともあります。

種明かし演説に関しては、自尊心を傷つけない形で他のお客様に配慮して頂けるようお伝えすると、演説を中止してくれます。

脱線しますが、テーブルホップのパフォーマンスを行う場合、イベントのホストに然るべき紹介をして頂くことも大切です。「お前誰やねん」という当然の疑問を防ぐことができます。

 

・お客様がいなくなる

残念ながらもう、どうしようもありません。あきらめます。

強いて言うなら、テーブルホッピングでは、現象までの時間を短くするくらいでしょう。

 

・ドリンクをこぼされる

驚いた際に、手がグラスに当たってしまう…なんてこともあります。お手元のグラスにはご注意くださいと一声掛けるだけで、十分に回避可能です。

 

・殴られる

僕自身は1度、そんなことがありました。具体的には突然、胸ぐらを掴れ、パンチされました。マジシャンがどうだとか、 マナーだとか以前に違法行為です。

対策としては酔いすぎている人には近づかないことが挙げられます。しかし、もはやこうなっては、マジシャンにはどうすることもできません。カンフーの達人になるにも時間がかかります。

怪我をしたなら、後ほど法的な処置をとり、損害賠償請求を行います。

 

以上、ざっくりと纏めてみました。

マジックはどう楽しんで頂いても結構だと僕は思っています。お客様にマジシャン側の都合を押し付けるのではなく、上手く回避し、楽しんで頂けるよう誘導できるのが優れたマジシャンなのかもしれません。ただ、最低限の人としてのマナーというものはあります。金を払っているんだから何をしても良い、というのはマジックに限らず恥ずべき態度です。そのような常識が著しく欠けたお客様がいることも事実です。ただ、それを「運の悪い事故」だと片付けず、再発防止のため自分に何ができるかを考えることも大切だと思っています。

自戒を込めて。

 

 

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