思うこと, ビジネス

本の執筆依頼を頂きました!が…|共同出版の費用と思うこと

Bookshuppan

先日、私宛に一通のメールが届きました。件名には「執筆依頼」とあり、雑誌かウェブ媒体かなと思って開いてみると、出版社からの本の執筆依頼ではありませんか。

 

「ブログを見て、ぜひ本を書いて欲しいと思いました!取り急ぎ、どのような内容にするかなどを打ち合わせさせてください!」ってな感じの内容です。

 

唐突過ぎてなんだかよく分かりませんでしたが、お話を伺ってきました。

結論から言うと、今回”も”辞退させて頂く形になりました。

実はこの手の話は今回で2回目でして、同じ境遇の方に何か参考になればと、個人的に思うことをつらつら書くことにします。

僕がお話を頂いた出版社はPOD(プリント・オン・デマンド)」専門で出版事業を行っている比較的新しい出版社でした。

PODとは、書籍をAmazonに登録し、注文が入り次第、印刷・出荷するサービスのことです。

電子出版ではありませんが、性質上、書店に並ぶことはありません。

馴染みがない方も多いと思いますが、PODは革命的な出版方法だと思います。

出版側のメリットは、流通、書店への販売手数料、営業活動、印刷費等の初回のコストを大幅に抑えることができることです。

ニッチな市場でも、リスクを抱えずに出版できるのです。

 

ただ、今回、僕が頂いたお話は「共同出版」という形での執筆依頼でした。

共同出版とは簡単に言うと「出版に掛かるコストを出版社側と著者で折半して出版しましょう」という形式です。

(一般的には出版社が全てのコストを持ち、著者に原稿料を支払います=商業出版。)

今回のお話では、私が最初に負担する費用は約50万とのことでした。

印税は10%です。初期コストを回収するには3000部程販売する必要があります。

当出版社では物凄く売れた本は2万部程、全然売れないものは30冊とか50冊その辺りとのお話でした。

amazonで出版状況を見ると大体の想像が付きますが、大半は売れないのだと思います。

そもそも今、本を売るのは難しい時代です。

 

このお話を踏まえて、イニシャルコストである50万円を投資だと考えた場合、余程でないと割に合いません。

相当キャッチーな内容であれば可能性はありますが、今僕が書けること(=書きたいこと)と知名度を掛け合わせて考えると、初期コストを回収することは難しいでしょう。

セルフブランディングへの投資だと考えても、書店に並ばないとなると費用対効果は薄いと考えます。

通常、大手の出版社であれば、書店に並べることに加えて、一応はPRを行いますが、当出版社の場合、そのような営業活動やPRは行っていないと想定できます。

企業がそれなりにPRを行って、30冊しか売れないなんてことは考えにくいからです。

ということは、この50万円は企画および編集費に加えて、デザイン費用ということになります。

 

これを高いと思うか、妥当だと思うかは人によると思いますが、通常の商業出版の場合、出版社も印刷費の負担などのリスクがあるのですが、PODでの出版の場合は人的コスト以外に出版社にリスクはないので、個人的には共同出版といいつつもフェアな形式とは言えないと思います。

著者からのイニシャルコストを利益として考えて、偶然ヒットすればその分さらに利益になるというビジネスモデルとも捉えれることができます。

大手出版社との共同出版である場合は、専門的な知識を持つ編集者とともに仕事ができる、書店に並ぶ(PR効果)という点でメリットになりえますが、今回はそういうわけでもないので、総合的に考えて、辞退する形をとらせて頂きました。

 

おそらくですが、この手の出版社はブログ発信をしていて、ある程度アクセスを集めている人に手当たり次第営業をかけているのではないかと思われます。(ブログ内容をべた褒めされます。)

 

あまり知られていませんが、PODでの出版であればその気になれば自分で出せます。面倒な手続きを代行してもらっても数千円〜数万円程度です。「なんでもいいから本を出したい!」という人は、心に留めておいてもいいかもしれません。

 

また、以前出版社の方とお話をした際に共同出版という形での出版は注意が必要だと伺ったことがあります。

出版社ではコンテストや〇〇賞などという形で、作品を公募することがありますが、賞を逃した人にも共同出版を持ちかけれることがあるそうです。その場合、費用は数百万にもなり、さらに数年後、売れ残った書籍を買い取らなければいけないという条件が付く出版社もあるそうな。

コストを回収できればいいのですが、出版社もリスクを背負っていないので、自社負担で出版することに比べると力を割く割合も少なくなります。中には費用だけ請求して、内容に関しては丸投げされるということもあるそうな。その分、好き勝手書けるというのはありますが。

 

「本を出すのが夢!」という方はたくさんいるかと思われますので、そういう人にとってはなんとも悩ましい話かもしれません。

売れなくても人生の記念になればいいと考えれば、価値はあります。(もしくは節税とか…)

だけど、本を出してたくさんの人に読んでほしい(売りたい!)という考えの方はよく考える必要があります。

 

本を出す王道ルートは、出版社への企画の持ち込みです。

共同出版をすることが悪いとは決して思いませんが、共同出版を選択する前に、自分の企画を出版社に持ち込んでみてからでも遅くはないと思います。

売れる企画と判断されたなら、商業出版として採用されます。

 

今の時代、思う事を文字で表現することは、ブログやTwitterでもできます。リーチ数だけで言うと、ブログのほうが効率が良いです。また、ブログで長期的にヒットを出せる内容を書けなければ、本を出してヒットすることも難しいのではないかとも思ってしまいます。オンラインで本当に面白いことをリリースしているならば、商業出版を前提に出版社から声がかかることもあるのではないかと思います。

 

情報を発信しているといろんな話が舞い込んできます。

しかし、世の中そんなに都合の良い話はないと心得ておいたほうが、健全に人生を歩めると思っています。

何かの参考になれば幸いです。

 

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