BLOG, マジックの話
お客様から拍手をもらう方法
マジシャンとして、「拍手」をもらうというのは1つの大切な仕事だと思っています。
理由は3つほどあります。
1つは、単に盛り上がるから。
お茶の間でお菓子を食べながら、テレビを通してマジックを見て頂くのとは違う、「ライブだからこそ」という何かを提供しなければいけないと思っています。
そしてそのためには、お客様に能動的に楽しんで頂くことが必要です。
拍手というのは、こちらの世界に能動的に入ってきてもらう心理的なトリガーになります。
2つめ、クライアントが安心します。
ゲストに楽しんで頂く為にマジシャンを呼んだわけで、お客様が無反応だと大変不安に思います。
お客様はもちろんですが、クライアントに喜んで頂くのもマジシャンの仕事の1つです。
3つめ、良いマジックができる。
当然、盛り上がっている空間はマジシャンのモチベーションも上がります。
マジックというのは、マジシャンが演じるマジックだけで成立するものではありません。お客様との対話によって成り立つ部分も大きいと考えています。
よくテーマパークのショーでMCが「楽しい時間はみんなで作るものだよ!」なんて最初に叫んだりしていますが、つまりはそういうことです。
これは本当にそうです。
お客様の反応を引き出すというのも、マジックの1つの構成要素だと思っています。
さて、ではどのようにして拍手を頂くかというお話です。
自然に拍手が起こるというのが、1番ベストです。
ただ、多くのお客様にとって、マジックを見ることは非日常です。
当然、拍手をすることも不慣れなことです。
どこで拍手をしていいのかも分かりませんし、拍手をするものなのかどうかも分からない、というのがある意味普通です。
僕は海外でもマジックを披露しますが、なぜか日本は特にその傾向が強いです。
1番簡単な方法は、「拍手を頂けると嬉しい」というのを序盤にストレートに伝えることだと思います。
お客様に「不思議な現象が起こったら、不思議だと思ったら拍手をすればいいんだ」と理解して頂けます。
非常にシンプル。
そして、きちんと間をとる。
「ここで1つくぎりがついた」とお客様に感じてもらうということですね。
ステージに立つと、このことを結構忘れがちです。僕もある尊敬するマジシャンの方に指摘されるまではそうでした。
マジシャンはこれから起こることも、何が起こるかも理解しています。ですが、お客様はその限りではありません。
想像の範囲外のことが起こりますので、マジシャンが意図することをお客様が理解するまでにタイムラグが発生します。
これから起こるであろう不可思議な現象の可能性を十分に感じてもらってから、不思議な現象を起こすことでお客様のフラストレーションを解消します。
もちろんこれは、ケースバイケースで一概には言えません。
何が起こったのかを理解して頂き、きちんと不思議だと感じてもらうまで適切な間をとることで、拍手をもらいやすくなります。
少しテクニカルなところでは、お客様の無意識にボディーランゲージで拍手をして頂くよう促すというのも意識しています。
例えば、不思議なことが起こった瞬間に、マジシャン自身が「1度、手を叩く」。
お客様に無意識に同調して頂けます。
いかがでしたか。
これは、マジシャンとしての話ですが、もしかすると日常でも役に立つ側面もあるかもしれません。
どこかで参考になる部分があれば幸いです。
そしてもう1つ。
拍手をして頂くのはとても嬉しいことですが、もちろん、マジックの楽しみ方はひとそれぞれです。過度な強制はしません。
タネがどのようになっているのか、パズルのように楽しむのも1つの楽しみ方です。
ですが、もしよければ、これはマジックに限らず、皆様も何かをみてすごいな!と思ったら、「拍手」でその気持ちを素直に表現してあげてくださいね。笑
パフォーマンスする人間にとっては、その瞬間が何より嬉しい瞬間です。