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マジシャンが学校の先生になってみて3年目の今、思うこと。

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一昨年から、私立の中学校でマジックを通年で教えています。

参考:学校教育に「マジックの授業」を

テレビにも取材をして頂いた中、2年目のクールが終了し、3年目も契約続行という形になりました。色々と学んだことや思うことがあったので、ここに記したいと思います。

教えるって難しい

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基本的にはカリキュラムも教え方も全て、僕が担当しているので、最初は結構戸惑いもありました。

「簡単すぎず、難しすぎない、かつ特別な道具を使わない」という括りで教えるトリックを選ぶのにそこそこ苦労しました。

この授業の目的はあくまでも表現力の向上を目的にしています。

マジシャンを育成するための授業ではないため、小難しいテクニックなどを教えると、趣旨がズレてしまいます。家にあるマジックの資料を一通り見返したり、知人のマジシャンに意見を求めたりして、カリキュラムを作りました。

しかし、毎回、ヒアリングしているうちに、少し僕の感覚とズレている部分もあったりして、調整を重ねる必要がありました。当然ながら、生徒によって、理解度が異なるので、その辺りも大変難しいのです。自分が精通している分野だけあって、何をどこまで教えればよいのか、正直、一年目は手探りな部分もありました。

授業は大体100分×14回程度で1クールです。

これ、埋めるのが結構大変です。正直、マジックのタネを解説するだけなら、ワントリック10分もあれば済んでしまいます。100分で行う予定が30分で終わってしまった時には驚愕しました笑。

トリックを教えることを重視するのではなく、トリックを介して表現力を向上させることに視点をシフトすることで、カリキュラムを自然に埋めることができました。このマジックを魅力的に見せるにはどうすべきか、どうのようにすれば上手に不思議さを伝えることができるのか、この辺りを実演を交えて解説することにしています。

発表に関しても、台本を作成し、自分の姿をビデオで撮影するなど、バリエーションを増やしたり、工夫を重ねました。

何度も教壇にたつと、100分の時間感覚もなんとなくわかってくるので、話すスピードや話す量を調整できるようにもなってきました。

 

学校の先生って大変

マジックに興味のある人にマジックを教えるのは、ある意味簡単かもしれません。しかし、相手は中学生です。興味のあることには耳を寄せますが、面白くなかったら、露骨に態度に出ます笑。彼らは、よくも悪くも、とても正直です。

授業をまともに聞いてくれない生徒がいても、生徒のせいにしては何も解決しません。授業を聞いてくれないのは、教師の責任です。面白くないから、聞いてくれないのです。僕らだってそうでしょう?その教科に興味がなくたって、その先生の授業が面白かったら、聞いていましたよね。

だから、時には僕にしかできないような小話を披露したりもしましたし、発表の際は、僕も本気でマジックを行うなんてこともしました。グッと距離が近くなったと感じるのは、ユーモアを交えた「失敗話」です。これは大人同士でも同じかもしれません。成功談ばかり聞いていたら、嫌味に聞こえたりするのは、僕たちだってそうでしょう?

ちなみに「インドでスプーン曲げたら神様になった話」は馬鹿受けでした。

僕は隔週くらいで授業をするだけですが、これを毎日行い、その他諸々のお仕事をこなす先生方は大変なのだろうと素直に思います。好きじゃないとできないと思います。

 

教えることは自分の成長に繋がる

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教えることで、学ばされることは多くあります。

毎回100分の内容を飽きないように構成することは、マジックにも活きてきますし、プレゼンテーションのスキルも向上したように思えます。僕は時々、講演などのオファーをいただくこともあるのですが、その際にも授業で学んだことは役立ちます。

学校の先生方にも、先生ならではの技術を教えてもらいました。

例えば、ワークで盛り上がりすぎてしまった時、一部の生徒がお喋りをやめてくれないときがあります。

この生徒たちを、再び話に集中させる際には「聞いてね!」と叫ぶのではなく「黙る」こと。黙ることで「先生が授業を続けられなくて、私たちが授業を受けられないのは、お喋りしている子たちのせい」と「教師 対 お喋りしている生徒」から「お喋りしている生徒 対 教室の他全員」という構図になり、圧力が数倍になるのですね。めっちゃ静かになります笑。これには目から鱗でした。

 

成長が垣間見れると嬉しい

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定期的に発表の機会を設けるのですが、回を重ねるごとに成長し、最初はみんなの前でマジックをするのも恥ずかしがっていたような子も、最後に保護者の前で発表する際には見間違えるようなマジックを披露してくれます。

びっくりするのが、僕が教えているマジックをそのまま演じる生徒はほとんどいなくなるということです。これは僕が「マジックに正解はないんだよ」と言っているのも影響しているとは思いますが、独自の演出やストーリを加えたり、それぞれの個性が垣間見れるようになってきます。

中にはセンスを感じられるマジックを創作してくる子もいて、僕も「それ、どうやって考えたの?」なんて聞いてしまうことも。

また、この授業をきっかけに、マジックに興味を本格的に持ち出した生徒もいたりして、自分でテクニックを練習して、びっくりするようなマジックを披露してくれる生徒もいます。

最後に堂々と保護者の方々の前で発表する姿を見ると、やっぱり嬉しくなりますよね。

そして、それぞれの個性は、年齢を重ねてもそのまま大切にして欲しいなと、思ったりします。

 

そんなこんなで、早くも三年目。

より良い教育機会を提供できるように、ブラッシュアップしていきます。

この活動は広めていきたいので、教育関係者の方でご興味をお持ち頂いた方は、気軽にご連絡頂ければと思います。